■森林研究部門

■所在: (本所)  TEL(0957)26-4292 / FAX26-9197
■職員数: 研究7(うち部門長1),現業2

 

長崎県の森林面積は約219,000ヘクタールあります。そのうちヒノキやスギなどの人工林が、約89,000ヘクタールで森林面積の約40%を占めています。

本県は離島や半島が多く、海岸線の総延長も長いことから、海の影響を強く受けている森林が多いことが特徴です。 森林には、木材を生産する機能に加えて、水源かん養・防潮・防風等の多面的機能があることが古くから広く知られています。 近年では、温室効果ガスのひとつとされる二酸化炭素吸収機能が社会的に注目されています。

このような森林のもつ機能を十分発揮させるための技術開発に加えて、森林の伐採・利用→植林→育成→伐採・利用という循環利用を 円滑に進めるための低コスト化や資源管理技術など持続可能な森林経営のための技術開発、地域活性化への貢献を目ざしたシイタケやツバキなど、他県とも競争できる特用林産物の振興のための技術開発に取り組んでいます。

森林研究部門では、他の研究機関、大学、地元市町や民間団体などと連携して、次のような研究・開発に部門員全員が積極的に取り組んでいます。

 森林資源の循環利用など持続可能な森林経営に関する試験。

 低コストで効率的な森林施業技術の開発。

 森林病害虫獣害防除技術の改善及び開発。

 木質資源の利用・加工及びシイタケなど特用林産物の栽培技術の開発。

 水土保全、海岸林育成、温暖化防止技術など森林機能の発揮と環境保全に関する研究。


研究課題

現在取り組んでいる研究課題の紹介へ

 

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現在取り組んでいる研究課題の紹介

1.人工林資源の循環利用を可能にする技術の開発(H21〜25年度)

(1) 背景

植栽から下刈りまでのコスト高により、伐採後の植栽が行われない林分が増加傾向にあります。 また、下層木が存在しない人工林内での表土流亡は林地生産力を低下させ、植栽木の成長に悪影響がでる危険があります。 これらのことから、人工林の循環利用に支障が出る恐れがあり、解決策が求められています。

(2) 目的

◎低密度植栽と下刈り方法改善による育林初期における新たなコスト低減技術の開発と、

◎林地生産力維持のための効率的下層木誘導技術の開発を行います。

これら2つの技術により本県の林業活動の基盤を安定化させ、森林の持続的活用と生活環境の保全の実現を目指します。

(3) 内容

◎育林初期における新たなコスト低減技術の開発

  ・植栽本数別(1000、1500、3000本/ha)コスト、成長量比較調査

  ・下刈り方法別(全刈り、冬季刈り、交互刈り)コスト、成長量比較調査

◎林地生産力維持のための効率的下層木誘導技術の開発

  ・下層木健全度判定基準作成のための現地調査(人工林内の上層木・下層木調査、近接広葉樹林の樹種・人工林からの距離などの調査)

  ・下層木健全度判定基準の実証試験(現地調査により健全度を判定された人工林において林地生産力解析、表土流亡量の調査)

  ・下層木誘導技術の検討のための広葉樹(郷土樹種)の照度・樹種別成長量調査

(4) これまでの成果

◎育林初期における新たなコスト低減技術の開発

  ・諫早市内2箇所において植栽本数別(1000、1500、3000本/ha)調査のための試験区を設定しました。試験区はいずれもヒノキ林の風倒被害地で、植栽前の植生調査ではアオモジ、アカメガシワなどの先駆性樹種が確認されました。

  ・植栽コスト比較調査では、3000本/ha区での植栽作業時間を100%とした場合、1500本/ha試験区では約60%、1000本/ha試験区では約40%の作業時間で植栽ができました。

◎林地生産力維持のための効率的下層木誘導技術の開発

  ・下層木健全度判定基準作成のための現地調査対象林分を、主に長崎南部の普及区内にある公有林・公社林の中から間伐実施履歴を用いて抽出しました。

  ・その後現地調査を(人工林15箇所、広葉樹林10箇所)実施し、実証試験地(人工林3箇所)を設定しました。

  ・また、広葉樹林の照度別成長量調査区をセンター実験林内に1箇所設定しました。

2.長伐期施業体系確立事業

(1) 背景

全国的にスギ・ヒノキ人工林の管理は40年前後で伐採する短伐期施業だけでなく、100年前後で伐採する長伐期施業も用いられています。 長崎県は、離島や島嶼部が多く、様々な自然環境に恵まれています。 スギやヒノキの成長は環境に影響されるため、地域に応じた施業の基準が必要です。 現在、短伐期施業の基準はありますが、長伐期施業の基準がないため、早急な対応が求められています。

(2) 目的

長崎県内のスギ・ヒノキ人工林について調査し、長崎県に適応した長伐期施業の基準を作成します。

(3) 内容

長崎県内のスギ・ヒノキの樹高や胸高直径、成立本数などをできるだけ多くの森林で調べます。 樹木の成長は、成長速度を表す地位指数と木材の体積を表す林分密度管理図で管理することができます。 そこで、長崎県に適応した地位指数と林分密度管理図を作成しているところです。

(4) これまでの成果

現在、長崎県のヒノキについて、作業を進めています。 途中経過ですが、林分密度管理図を見直した結果、従来の基準より収穫できる木材の体積が増えることが期待されました。 また、地位指数を見直した結果、従来の基準より80年生でも成長を続ける傾向が認められました。 これらの結果から、現在、ヒノキの長伐期施業の基準を作成しています。

3.菌根菌を活用した海岸林の造成・更新技術の開発(H20〜24年度)

(1) 背景

海岸クロマツ林は台風や松くい虫被害等により衰退しており、防風、潮害防備等の保安林として防災機能の低下が懸念されています。

(2) 目的

海岸クロマツ林について、菌根菌感染苗等を活用した潮風害・乾燥等の生育阻害要因に高い耐性を有する海岸林の造成・更新技術を開発します。

(3) 内容

海岸林における在来菌根菌の分布状況の解明(在来菌根菌の実態の解明)。

菌根菌の感染・定着促進技術の開発(懸濁液の林内散布による菌根菌の根茎への定着、林内における木炭施用による根茎での在来菌根菌活性化調査)。

菌根菌感染苗の育成(在来菌根菌の採取並びに苗木接種、接種苗木における在来菌根菌の定着状況調査)。

菌根菌感染苗の現地適応化(懸濁液の林内散布によるクロマツの生育状況及び木炭施用によるクロマツの生育状況調査、菌根菌感染クロマツ苗の植栽による生育育状況調査)。

(4) これまでの成果

20年度に南島原市加津佐町野田浜に固定調査地を設置し、毎月1回〜2回の現地調査を行い、菌根菌2種(コツブタケ・ショウロ類)の発生状況を調査し、コツブタケ約900個とショウロ類は約300個の子実体の発生を確認しました。

21年度はコツブタケ・ショウロ類に加えてイグチ類等10種の菌根菌子実体990個を確認、昨年度多数発生したコツブタケは13個と今年は少なく一番多かったのはショウロ類で561個の発生を確認しました。

2年間に確認した12種(コツブタケ、ショウロ類、アミタケ、テングタケ類、チチアワタケ、その他[7種])の菌根菌子実体のうちコツブタケ・ショウロ類の発生数が8割以上を占めていることから、在来菌根菌の中で島原半島の海岸クロマツ林での優占種及びクロマツの健全・活性化を助長するのは、コツブタケ、ショウロ類の2菌種と推察されました。

加津佐町野田浜の海岸クロマツ林にコツブタケ、ショウロ類子実体の縣濁液(子実体の粉砕液)を散布、松葉かき区・木炭施用区などの試験区を設定しました。

加津佐町で採取したショウロ類を感染させた苗とヌメリイグチ感染苗を島原市に植栽し、固定調査地を設定しました。

4.諫早湾干拓における防風林造成試験(H12年度〜)

(1) 背景

諫早湾干拓地において農作物を塩害や潮害から守るためには、防風林や緑地帯を造成する必要があります。 しかし、干拓地内における樹木の生育については知見が乏しいため、防風林造成に適した樹種を選定する必要があります。

(2) 目的

諫早湾干拓地に防風林を造成する場合に適した樹種を、実際に干拓地内に植栽試験を行って選定します。

(3) 内容

干拓地内に5×60mの試験区を設定し、土壌にピートモスを混入したピートモス区と混入しなかった原土区それぞれに耐塩性が高いとされる高木、中低木類19種類を植栽して成長量調査を実施中。

(4) これまでの成果

干拓地植栽後8年目までの樹高成長が4m前後まで成長するのは、ナンキンハゼ、クロマツ、マサキなど11種類です。

中低木類のトベラは一般的な樹高とされている2〜3m程度まで成長します。

干拓地で植栽木へピートモスを施用しても、樹高成長や生存本数へ効果が見られませんでした。

参考資料

成果情報(PDF形式): 「諫早湾干拓地における耐塩性樹木の植栽後8年目の生育状況」(H21)

5.原木しいたけを加害するシイタケオオヒロズコガの生態解明と防除技術の開発(H22〜24年度)

(1) 背景

対馬しいたけは地域特産物として対馬市の振興計画のもと生産量の増産体制を図っている。しかし、シイタケオオヒロズコガ幼虫による異物混入事例が有り、品質の低下が心配されます。

(2) 目的

シイタケオオヒロズコガの生態解明と防除法を開発し、防除マニュアルを作成します

(3) 内容

シイタケオオヒロズコガの発生時期、幼虫のキノコへの侵入時期及び、しいたけ生産現場の環境条件と被害との関係等、諸因子を解明し、無農薬による防除技術を開発します。

6.ツバキの新機能活用技術及び高生産性ツバキ林育成技術の開発(H20〜22年度)

(1) 背景

長崎県のツバキ油生産量は、全国1〜2位であり、そのほとんどは本県下のツバキ林面積の90%が分布している五島地域で生産されています。地元ではツバキを使った地域活性化の気運が高まり、自治体や関係団体の活動が活発になっている。このような中、ツバキの新需要開拓、新用途開発、生産性向上技術等、試験研究への要請が強くなっています。

(2) 目的

離島地域は急激に過疎化が進み、地域振興の緊急性が強い地域です。そのため、他産業との差別化・高付加価値化を目的としてこれまでにない新しいツバキ油製造技術、ツバキ葉・花弁を使った食品加工技術、及び経済効果を最大限に高めるためのツバキ林育成技術を開発します。

(3) 内容

ツバキ油の需要阻害要因であるベタツキ感や独特の臭いを解消し、オレイン酸含有率の高いツバキ油を製造できる新たな技術、及びツバキ葉・花弁の多様な機能性成分を活用した食品加工技術を開発し、有効成分の機能性と安全性を確認し、製品化を検討します。

また、ツバキ実生産性が低下したツバキ林を断幹・萌芽により生産性の高いツバキ林へと早期に更新・誘導する技術、及び結実促進のためツバキに適した環状剥皮法を開発します。

さらに「五島つばき」の遺伝的変異を明らかにします。そして、これらの成果を高生産性ツバキ林育成技術としてマニュアル化します。

7.森林吸収源インベントリ情報整備事業(H18〜22年度)

(1) 背景

地球温暖化防止の必要性、及び温暖化の一因とされる二酸化炭素を森林が吸収していることは社会的に認知されています。そのような中、国際的な取り決めである「京都議定書」に基づき、地球温暖化防止森林吸収源10ヵ年対策が推進されています。

(2) 目的

京都議定書に基づく森林吸収量の算定・報告・検証は、吸収量計測のための国際指針に沿った手法で行い、条約事務局の編成する専門家チームによる審査を受ける必要があります。本事業では、京都議定書第一約束期間(2008年〜2012年)において、我が国の森林吸収量の算定・報告・検証を円滑に行うことを目的に、国際指針の決定に伴い追加的に必要となったバイオマス量データ収集を行っています。

(3) 内容

本事業は、森林資源モニタリング調査プロットのうち特定調査プロット(全国約3000 点)で行われ、本県も全国的なモニタリング調査の一翼を担い25ヶ所(5 年間)において、試験地概況調査、枯死木調査、堆積有機物量調査、森林土壌の炭素量・容積重調査を実施しています。

(4) これまでの成果

京都議定書で求められている森林吸収量の算定・報告・検証に貢献しています。

参考資料

森林内の炭素蓄積のイメージ図(PDF形式)


終了した研究課題の成果の紹介

1.森林・緑化樹の侵入害虫による被害実態と防除法の確立(H19〜21年度)

(1) 背景

これまで本県で事例の無かった南方系の侵入害虫ヤシオオオサゾウムシによる緑化樹カナリーヤシの被害が報告されるようになりました。

(2) 目的

本県での被害実態を調査し、防除法を確立すること。

(3) 内容

◎県内に植栽されているカナリーヤシをモニタリングし、被害の推移を明らかにすること。

◎また、チアメトキサム液剤を用いた樹幹注入法により防除技術を確立すること。

(4) これまでの成果

被害は長崎半島南部から県央、県北、島原半島方面へと広がり続けています。

チアメトキサム液剤を用いた樹幹注入法による防除効果が明らかとなり、アトラック液剤として農薬登録されました。これにより、アトラック液剤と既存の散布剤等を用いた防除マニュアルを作成しました。

参考資料

『ヤシオオオサゾウムシによるカナリーヤシの被害防除の手引き』(PDF形式)

2.対馬しいたけのブランド確立のためのアベマキによる栽培技術の確立(H17〜21年度)

(1) 背景

対馬で使用されている原木のおよそ5割がアベマキですが、収量がコナラと比べると2割程度少ない状況です。アベマキを使用した原木栽培しいたけは肉厚で高品質とされており、生産性の改善が望まれていました。

(2) 目的

成形駒の開発により、アベマキでのシイタケの発生量に改善が見られました。このことから、成形駒を使用してアベマキでのシイタケの生産特性について解明を行うと共に、生産性の改善について解明することとしました。

(3) 内容

◎対馬で主に使用されている品種K115とM290の2種類の菌について近年開発された成形駒と従来からある木片駒について、原木にアベマキとコナラを用い、発生傾向の比較を行いました。

(4) これまでの成果

◎原木にアベマキとコナラを用い、K115とM290の2種類の菌について木片駒と成形駒によるシイタケの発生傾向の比較を行いました。

◎従来から使用されていた木片駒では、コナラに比べてアベマキでの発生量は少ないと言われていましたが、コナラに対してアベマキでの発生量K115で62%、M290で77%でした。

◎アベマキに成形駒を使用することで、木片駒に比べて、K115で163%、M290で158%の発生量となり、アベマキ原木の単位当たり収量が大きく改善することがわかりました。

◎成形駒において、アベマキとコナラに発生したシイタケを1個当たり生重量別に見ると、アベマキで重量が大きいものの発生量が多く優良シイタケ生産に適していることがわかりました。

参考資料

成果情報(PDF形式): 「アベマキを使った原木シイタケ栽培の植菌後4年目までの発生傾向」(PDF形式)