■農産園芸研究部門 − 馬鈴薯研究室

■所在: 〒854-0302 雲仙市愛野町乙2777  TEL(0957)36-0043 / FAX36-2697
■職員数: 研究7,現業3

馬鈴薯研究室は、島原半島のつけ根に位置し、東は雲仙岳、北は多良岳を望み、南の千々石湾から約500m離れた海抜60mの高台にあります。気候は温暖で年間降水量は1945mmと多く、年中風がよく吹きます。土壌は火山灰を含んだ安山岩埴壌土の台地で、雲仙山麓畑作地帯の一部であり、二期作バレイショ栽培に好適な環境にあります。

「馬鈴薯研究室」は、「愛野馬鈴薯支場」が、2009年4月の組織改正に伴い改組・改称された研究室です。 当研究室は、約60年間の長きにわたり育種・栽培と病害虫に関する研究を中心に取り組み、暖地バレイショ試験研究の中核機関として品種育成や技術開発に数々の成果を上げてきました。新たに土壌肥料を専門とする研究員が配属され、パワーアップしています。

現在は、バレイショを共通のターゲットとして各専門分野の力を結集し、新技術を導入・開発しながら、生産性の向上と安定、需要の開拓・拡大、食の安全・安心や環境保全型農業の推進などに応えられる、分野横断的な研究活動を目指しています。

(約1.7MB)(2011年4月版)

研究課題

現在取り組んでいる研究課題の紹介へ

 

終了した研究課題の成果の紹介へ


 

現在取り組んでいる研究課題の紹介

1.長崎有色ばれいしょの加工品開発(H21〜23年)

− 戦略プロジェクト「県内資源を活用した加工食品の開発」 −

(1) 背景

長崎県は全国2位のばれいしょ生産県ですが、その知名度は低く、また、ばれいしょの加工品や土産品も少ない状況です。 馬鈴薯研究室において、アントシアニンを含む赤肉の「西海31号」を育成し、品種登録しましたが、既存の品種に比べ 収量が低いため、増収対策の技術確立が急務です。 また、加工用途向け栽培については、増収対策とともに省力化栽培の技術確立が生産者の経営安定につながります。

(2) 目的

ばれいしょ「西海31号」の収量性を確保可能な栽培期間および資材等を用いた増収効果を検討し、安定生産技術を確立します。

(3) 内容

増収効果の見込まれる最適な栽培期間(植付け期、収穫時期)を検討します。

被覆資材等を利用し、増収効果が高い資材を選定します。

収量性を維持し、マルチ被覆や芽出し作業等の省力化が可能な栽培技術の導入を検討します

(4) これまでの成果

青果栽培における慣行条件に比べて、栽培期間の検討により増収効果が確認されています (H21〜22年)。マルチ被覆後の移植機の利用や各種資材の利用により、芽出し作業の省力化が図られ、慣行栽培と同等な収量が得られています(H22)。

参考資料

「西海31号」の情報 ( 西海31号のページにジャンプ )

         

  

研究の紹介(PDF形式): 「長崎有色ばれいしょ(カラフルポテト)の加工品開発に関する調査分析」

  

 

2.いさはや新池の水質改善  − 畑地からの土壌流亡防止技術の開発 −(H22〜24年)

− 戦略プロジェクト「環境と調和した農業・水産業の実現」−

(1) 背景

いさはや新池の水質保全のためには、干拓地や背後地からの窒素、リン、有機物などの流出を軽減することが重要である。背後地の主要畑作物であるバレイショ畑では、春作バレイショ収穫後に裸地状態で梅雨期を迎えるため、畑土壌を含んだ濁水等の流出が特に多く、環境負荷の主要な原因のひとつとなっている。

土壌流亡防止のためにはカバークロップの栽培が有効であるが、作業性や労力の問題、病害虫への懸念などから導入が進んでいない。

(2) 目的

バレイショ栽培圃場へのカバークロップ導入の推進と土壌流亡の軽減をを目的に、強酸性土壌への適応性、バレイショ収穫期とカバークロップ播種期との労力競合、土壌改善効果の不透明性、そうか病等土壌病害増加の懸念、などの問題を解決するため、カバークロップの草種選定と省力化栽培技術の確立を行なう。

(3) 内容

1) ばれいしょ畑に適したカバークロップ適草種選定及び影響の解明試験

 @強酸性土壌への適応性

 A高温多湿条件での生育特性

 Bそうか病等の土壌病害への影響

 C鋤き込みの作業性

 D鋤き込み後の腐熟特性

 E土壌改善効果(ばれいしょ栽培への影響)

 F土壌流亡防止効果

2) カバークロップ省力化栽培技術試験

 

3.周年安定供給を可能とする食品加工用バレイショ品種の育成と栽培法の開発

(暖地2期作向け病虫害抵抗性食品加工用品種の育成)

(1) 背景

ポテトチップなど加工食品用バレイショは北海道を中心に栽培されており8月〜9月にかけて収穫されています。 その後、翌年まで貯蔵して供給されますが貯蔵能力の限界から5月〜7月にかけて原料は不足しています。現在、鹿児島県などで6月出荷の加工食品バレイショが栽培されていますが、北海道で育成された品種を使用しており、 病虫害の発生や品質のバラツキが問題となっています

(2) 目的

加工食品用バレイショの周年安定供給のため、暖地2期作栽培向け病虫害抵抗性食品加工用品種を育成します。

(3) 内容

ジャガイモシストセンチュウおよびジャガイモYウイルス抵抗性を有し青枯病に強くチップおよびフライ適性がある「西海37号」、およびジャガイモシストセンチュウおよびジャガイモYウイルス抵抗性を有しチップ適性がある「長系141号」等の栽培試験や特性調査(チップ、フライほか)等を実施します

 

4.バレイショのウイルス病およびシストセンチュウ抵抗性品種・系統の育成

(1) 背景

長崎県のバレイショは、栽培面積約4000ha、生産額約100億円であり、全国2位の生産量を占める重要な品目です。当研究室で育成した「ニシユタカ」は本県の栽培面積の72%(H20年)を占めています。しかし、「ニシユタカ」はジャガイモYウイルス、ジャガイモシストセンチュウ、そうか病に弱いため、これらの病虫害の発生が生産現場では大きな問題となっています。 また、近年、消費者からの「食の安全・安心」指向の高まりにより、生産現場からは無農薬や減農薬栽培が可能な品種の育成が望まれています。

(2) 目的

「ニシユタカ」で問題となっているウイルス病、ジャガイモシストセンチュウ等に複合抵抗性を有するバレイショ品種を育成します。

(3) 内容

病虫害抵抗性品種・系統、高でん粉系統、カロチノイドを含む良食味系統などを交配親として年間200組合せ程度の交配を行い、順次選抜しています

(4) これまでの成果

ジャガイモYウイルス、ジャガイモシストセンチュウ、そうか病などをターゲットにし、DNAマーカーや汚染圃場等による選抜、および、生産力、品質や栽培特性等により、2〜3の病虫害に複合的に抵抗性を持つ品種・系統を育成します。

 

5.地球温暖化に対応したバレイショ品種の育成

(1) 背景

長崎県のバレイショは、栽培面積約4,000ha、生産額約100億円の主幹作物である。地球温暖化に進展により、バレイショ栽培では、高温下で多発する青枯病や、種いもや塊茎の高温による腐敗など生産上の甚大な被害が予想される。さらに、青枯病対策のための農薬使用や腐敗いもの廃棄などによる環境汚染やさらなる地球温暖化を引き起こすことが懸念される。そこで、農薬使用や腐敗いも等の廃棄物の削減が可能なバレイショ品種が必要である。

(2) 目的

バレイショ育種において、地球温暖化が進展しても高温条件に適応性が高く、青枯病の被害が少なく、種いもや塊茎の腐敗が少ない有望系統を育成・選抜する。

(3) 内容

現在育成中の個体・系統(約23,000個体・系統)の中から、高温条件下におけるいも腐敗耐性、青枯病抵抗性、生育特性、収量性や他の病害虫抵抗性等を調査し、農薬の使用低減が可能で安定生産が可能な有望系統を育成・選抜する。

 

6.有機性資源を活用したばれいしょの減化学肥料栽培(平成21〜23年)

(土壌機能増進対策事業 施用基準等設定栽培試験)

(1) 背景

食の安心・安全や環境保全に対する生産者や消費者の意識が高まっており、できるだけ化学肥料に頼らない栽培技術が望まれている。また、輸入に頼っている化学肥料の原価高騰により生産者の肥料コストの負担が大きな問題となっており、化学肥料を減らし地域の有機性資源からの肥料供給技術の確立がのぞまれている。

(2) 目的

バレイショ二期作栽培において、窒素成分については本県特別栽培認証制度基準より低い化学肥料施用量を目標に、土壌蓄積傾向が問題になっているリン酸、カリ等については有機性資源の有効活用による施用量の低減を目標に、堆肥の種類、施用量と化学肥料を組み合わせた施肥技術を確立する。

(3) 内容

1)減化学肥料と有機性資源(牛フン、豚プン、鶏フン)の組み合わせの二期作バレイショの生育、収量、病害虫発生への影響解明

2)減化学肥料と有機性資源(牛フン、豚プン、鶏フン)の組み合わせによる土壌中の養分蓄積傾向と土壌状態の把握。

各種有機性資源(牛フン、豚プン、鶏フン)の肥料代替効果の解明と、化学肥料との最適組み合わせ技術の確立。

 

7.有機物資源連用栽培試験(畑)(平成6年〜  )

(土壌機能増進対策事業 たい肥等有機物・化学肥料適正使用指針策定調査)

(1) 背景

バレイショ栽培において、生育、収量、品質を向上・安定させ、化学肥料を削減するためには、地力を高めることが重要であり、そのためには有機物施用による地力増強効果について明らかにする必要がある。しかし,土壌物理性(固さ、保水性、排水性等)、土壌化学性(養分保持力、養分供給力)や土壌微生物層(微生物の数と種類の増加)などは、長年月かけて徐々に改善されるものであるため、5年、10年、20年と継続して試験を実施し、その改善効果を調査する必要がある。

(2) 目的

二期作バレイショ栽培圃場において、籾殻牛糞たい肥を長年にわたり連用することでの土壌の地力の変遷を追跡調査することで、化学肥料及び平成22年度から緑肥との併用によるバレイショの収量性や品質の向上を目指した地力増強技術を明らかにする。

(3) 内容

1)籾殻牛ふん堆肥連用量の違いによるバレイショの増収効果や土壌病害発生状況等の検証。

2)籾殻牛ふん堆肥連用量の違いによる地力増強効果の検証。

3)緑肥との併用による地力増強効果の検証(平成22年度から)

4)地力増強による減肥効果の検証。

(4) これまでの成果

バレイショの収量は、化学肥料単用に比べ籾殻牛ふん堆肥を連用することで収量性は向上した。しかし,そうか病の発生は、籾殻牛ふん堆肥を2t以上連用していくと増加した。

化学肥料に籾殻牛ふん堆肥を併用した区では、投入量に従って、土壌の全炭素、全窒素、可給態窒素、交換性カリ・苦土・石灰、及び有効態リン酸含量が増加した。

籾殻牛ふん堆肥3t連用していくと土壌の硬化強度が大きくなり、砕土性が悪くなる。

 

8.ジャガイモ病害虫に対する新農薬の作用機作

(1) 背景

ジャガイモ栽培では病害虫防除に農薬を利用しますが、本来効果のある薬剤が病原菌や害虫側に薬剤抵抗性が発達すると効力が低下したり、まったく新しい病害虫には有効な農薬が不明であったりするため、生産者が使用する際には農薬の効力に関する情報は重要です。長崎県産ジャガイモの安定生産には各種病害虫の発生実態に適合した病害虫防除対策が望まれ、加えて、消費者からは農産物の安全・安心を確保することも強く求められています。

(2) 目的

各種病害虫に対し有効な防除対策を策定するため、新規農薬の効果、薬害、安全性の試験および既存農薬の体系使用による効率的な防除技術を明らかにします。

(3) 内容

ジャガイモそうか病や薬剤抵抗性が発達したアブラムシ類に対する新規薬剤の防除効果の評価と薬害について調査しています。また、 春作栽培で最も薬剤散布回数が多いジャガイモ疫病に対し、複数の薬剤を体系的に使用して防除回数低減を図っています。

(4) これまでの成果

そうか病に対して有効な種いも消毒剤の登録推進を図るため、防除試験を行い効果の評価を行っています。また、環境負荷を低減する種いも消毒法について試験を継続しています。

ジャガイモ疫病に対しては、発生状況に応じて薬剤の特性を生かした防除を行うことにより、散布回数を3回程度に低減した防除体系を策定しました。

終了した研究課題の成果の紹介

 

1.温暖地・暖地向け病害・線虫抵抗性、高品質、多収のばれいしょ品種の育成(H18〜H22)

(1) 背景

バレイショは400年ほど前に長崎に伝来した作物ですが、日本における本格的栽培は明治以降に北海道を中心になされ、欧米諸国から各種品種が導入され、改良されてきました。しかし、北海道向けの品種では本県のバレイショ栽培の特徴である暖地二期作栽培には不向きで、休眠期間が長すぎる、耐暑性が弱い、暖地特有の病害虫に弱いなどの問題点があるため、暖地二期作栽培に適したバレイショ品種の育成が必要とされています。

暖地二期作向けバレイショ育種については、昭和25年から現在地(愛野町)にて着手し、翌年から指定試験事業として取組み、平成18年度から公募型となり、平成22年度までの61年間継続して実施してきました。

(2) 目的

春作、秋作の暖地二期作栽培に適し、そうか病、青枯病、ウイルス病、シストセンチュウなどの病害虫に抵抗性が強く、外観や品質に優れ、大いも・多収のバレイショ品種を育成します。

(3) 内容

@馬鈴薯研究室では有用遺伝資源として335品種・系統を保存し、交配親として利用しています。馬鈴薯研究室育成品種(14)、育成系統( 148)、北海道(北農研、北見)育成品種・系統(90)、海外導入品種(68)、民間育成品種他(16)

A育種試験:主として交配種子からの育成・選抜を行なう交雑育種法で実施し、病害虫抵抗性検定の一部はDNAマーカーを用いた抵抗性遺伝子の有無で判定・選抜を実施しています。

試験名 系統数 内   容
1年目 交配 20万粒 保存品種や有望系統を親として交配し、交配種子を得る
2年目 春作 実生1次 14,000粒 種子をトレイに播種し、鉢上げして栽培し、塊茎を得る
秋作 実生2次 7,000個体 1個体1株を圃場に植付け、外観、いもの大きさ等で選抜
3年目 春作 系統選抜 500系統 1系統8株で試験し病害虫抵抗性等を加味して選抜
目的に応じてDNAマーカーやそうか病抵抗性検定を実施
秋作 生検予備 50系統 1系統30株で試験
病害虫抵抗性、収量性、外観、食味などを調査し、総合的に選抜
4年目 春作 生産力検定 15系統 1系統40株3反復で試験
春作での特性をより詳しく調査、総合的に選抜
秋作 生産力検定 15系統 1系統40株3反復で試験。
秋作での特性をより詳しく調査、総合的に選抜
5〜7年目 生産力検定 2〜4系統 生産力検定試験を継続し、精度が高い特性調査を行うとともに、
生産現場での適応性試験、特性検定試験、栽培試験などを実施
8〜10年目 品種登録出願

B育種関連技術の開発

ア) DNAマーカー選抜技術の開発

イ) そうか病抵抗性系統選抜の効率化技術の開発

ウ) 有用遺伝子導入のための培養変異を利用した育種素材の作出

エ) 交配のための開花促進栽培技術の開発

オ) 交配のための花粉貯蔵技術の開発

    

(4) これまでの成果

昭和25年度から平成22年度までの61年間の暖地二期作向けバレイショ育種において、「ウンゼン」、「タチバナ」、「シマバラ」、「チヂワ」、「デジマ」、「セトユタカ」、「ニシユタカ」、「メイホウ」、「アイノアカ」、「普賢丸」、「春あかり」、「アイユタカ」、「西海31号」、「さんじゅう丸」の14品種を育成しました。

うち、「ウンゼン」、「タチバナ」、「デジマ」、「ニシユタカ」は、それぞれの時代の長崎県の主要品種として、バレイショ産地の育成や発展に貢献してきました。

また、近年育成した「アイユタカ」、「西海31号」、「さんじゅう丸」は、今後の産地化が期待される品種です。




参考資料

長崎県におけるバレイショ育種ポンチ絵

成果情報:[平成21]そうか病に強い暖地向けバレイショ新品種候補系統「西海30号」(さんじゅう丸)

成果情報:[平成16]赤肉バレイショ新品種候補系統「西海31号」

成果情報:[平成14]バレイショ新品種候補系統「西海29号」の調理特性

成果情報:[平成13]暖地向きバレイショ新品種候補系統「西海29号」(アイユタカ)

成果情報:[平成13]暖地向きバレイショ新品種候補系統「西海28号」(春あかり) 

 

2.ジャガイモ疫病抵抗性DNAマーカーの開発と利用(H19〜H22)

(1) 背景

バレイショ生産を脅かす重要病害虫は多数存在し、安定生産のためには病害虫の被害をいかに少なくするかが重要です。その中でもジャガイモ疫病は防除回数が最も多い病害であり、生産者にとっては多大なコストと労力を必要としています。そのため、疫病に抵抗性が強い品種の育成が望まれています。

(2) 目的

ジャガイモ疫病抵抗性品種の育成において、育成途中の系統の疫病真性抵抗性遺伝子の有無を明らかにできるDNAマーカーを、実際の育種場面で効率的使用するためのマルチプレックス法の開発を行ないます。

(3) 内容

近年開発されたジャガイモ疫病真性抵抗性遺伝子R1、R2に連鎖するDNAマーカーの実用的な利用技術を開発します。

具体的には、育種場面では多数系統を短期間に効率的に検定する必要があるため、開発された疫病抵抗性検定用DNAマーカーと他の病害虫抵抗性検定用DNAマーカーを同時に検出できるマルチプレックスPCR法の開発を行ないます。


(4) これまでの成果

バレイショ育種において、現在利用している3種類の病害虫抵抗性検定用DNAマーカー(ジャガイモシストセンチュウ、ジャガイモXウイルスおよびYウイルス)に加えて、新たに開発されたジャガイモ疫病真性抵抗性遺伝子R1、R2に連鎖するDNAマーカーの各プライマーセットの濃度、DNA合成酵素の量、PCR反応条件(温度、時間、サイクル数)の検討を行ない、5種類の病害虫抵抗性遺伝子に連鎖するDNAマーカーを同時に検出可能なマルチプレックスPCR法を開発しました。この方法は、汎用性が高く、高精度なうえに、検定作業時間を1/3に短縮でき、検定コストの削減が可能な方法です。

開発したマルチプレックスPCR法を用いて、R1,R2,R3を集積した22系統について疫病抵抗性を確認し、他の病害虫との複合抵抗性系統2系統を選抜しました。

参考資料

5つのDNAマーカーを同時検出可能なマルチプレックスPCR法の開発

 

3.諫早湾干拓地における環境保全型大規模生産技術体系の構築 (H19〜H21)

1)環境にやさしい種いも大量消毒システムの開発

(1) 背景

諫早湾干拓地では大規模かつ環境保全型の畑作農業の展開が求められており、バレイショは重要な作物のひとつとなっています。干拓地の土壌は海底であったために肥沃で病害虫がいないクリーンな状態である反面、土壌pHが高いためジャガイモそうか病菌が侵入すると、大きな被害を及ぼすことが懸念されます。クリーンな干拓地にそうか病を持ち込まないためには、消毒済の健全な種いもを使用することが重要であり、干拓地にあった大規模かつ環境にやさしい種いも消毒法が必要となっています。

(2) 目的

大規模バレイショ栽培において利用可能で、環境にやさしい種いも消毒方法を開発します。大量の種いもを使用する大規模バレイショ栽培において、省力的かつ効率的に種いも消毒が可能で、廃液が発生せずに環境負荷が少ない技術を開発します。

(3) 内容

ヨーロッパにおいては黒あざ病対象に使用されている微粒子噴霧機(ミニフェックシステム)を用いて、ジャガイモそうか病を対象に種いも消毒を行ない、防除効果と実用性について検討します。

(4) これまでの成果

微粒子噴霧機(ミニフェックシステム)を使用した種いも100kg当たり600ccの少量噴霧処理により、同剤の浸漬処理と同等の防除効果があること、事前に種いもを水洗して汚れを落とした場合は、さらに防除効果が高まることを明らかにしました。

この方法では、薬液量は10a当たり約1.5gと少なく、廃液がほとんど出ないため環境負荷が少ないとともに、1時間当たり種いも処理量は約3.5tと効率的に種いも消毒が可能です。

参考資料

成果情報:[平成21]バレイショ種いも消毒の微粒子噴霧処理によるジャガイモそうか病の防除

 

4.ジャガイモそうか病土壌燻蒸剤使用削減のための総合的防除対策 (H18〜20)

(1) 背景

ジャガイモそうか病は病原菌が土壌中にいる難防除病害で、そうか病が発生すると商品価値がなくなるため、バレイショ生産者が最も困っている問題です。 本県のジャガイモ産地では、長年の連作で、土壌の劣化、病害の発生をもたらしています。長崎県では1980年代からそうか病が大きな問題となり、その抑制のために、土壌pHを低く維持し、石灰資材の施用量を抑制してきましたが、毎作土壌消毒剤であるクロルピクリンを使用しなければ抑えられなくなりました。土壌の低pH化は肥効の低下を招き、収量を確保するために化学肥料の多施用を行うようになっています。

その結果、過剰な化学肥料の施用で硝酸態窒素の水資源への影響が懸念されています。また、クロルピクリン剤はその強い毒性のため、圃場近辺の住民、農作物や家畜などにに悪影響を与え、耕地土壌の生物性を悪化させています。このような状況を脱却するためにはクロルピクリンと化学肥料の使用量を減らす技術の開発が必要となっています。

(2) 目的

そうか病防除で使用されるクロルピクリン等のくん蒸剤の使用回数を削減することと、土壌の低pH維持の弊害を解消することを目的に、生物的防除、耐病性品種利用による耕種的防除を組合わせたそうか病対策技術と、施肥・土壌管理技術を検討します。

(3) 内容

@そうか病菌3種類について、島原半島における菌種毎の分布について調査しました。

Aそうか病対策の個別技術として、アメリカフウロソウ、拮抗微生物、サツマイモ焼酎廃液濃縮液、米糠、抵抗性品種の防除効果について検討しました。

B個別技術の組合せによる体系化技術の防除効果について、複数年の継続試験を実施しました。

Cそうか病発生を抑制しながら土壌改善を図る技術として、硝酸カルシウム資材や硫酸第一鉄資材の効果について検討しました。

(4) これまでの成果

@島原半島における3種類のそうか病菌の分布状況を明らかにしました。菌種としては、Streptomyces scabies が最も広く県内に分布していました。



A個別技術としては、抵抗性品種、アメリカフウロ層、拮抗微生物で防除効果が認められましたが、焼酎廃液では認められませんでした。

B個別技術を組合わせた体系化試験では、抵抗性品種と拮抗微生物の組合せでクロルピクリン並の防除効果が3作にわたり認められました。




C被覆硝酸カルシウム肥料と硫安を1:1に組み合わせた条施肥において、収量は増加し、植物体中のカルシウム含量が増加し、そうか病の発生は抑制可能でした。


参考資料

・成果情報:[平成20]:.クロルピクリンによる土壌くん蒸処理と個別技術を組み合わせたジャガイモそうか病の防除

・成果情報:[平成20]:.本県主要バレイショ産地土壌におけるジャガイモそうか病対策としての交換酸度とpH(H2O)との関係

・成果情報:[平成20]:.強酸性下バレイショ圃場における被覆硝酸カルシウムを用いた施肥改善

・成果情報:[平成20]:.土壌pH降下資材のバレイショ収量への影響とそうか病抑制対策