| ■所在: (本所) TEL(0957)26-4319 / FAX26-9197 |
| ■職員数: 研究6,現業1,嘱託1 |
当研究室は、平成21年4月の組織再編により誕生した新しい研究室で、花きの育種と栽培に関する研究、および農作物の生物工学に関する研究を行っています。
現在、花きでは輪ギク、カーネーション、小ギク等の育種を進める一方、輪ギクやトルコギキョウ等を省エネで安定生産するための技術に関する研究を行っています。
生物工学に関する研究では、病害虫に強いバレイショを効率的に選抜するためのDNAマーカーの開発、組織培養や放射線照射による花きの育種材料の作出等に取り組んでいます。
研究課題
現在取り組んでいる研究課題の紹介へ
- 1.輪ギク新品種育成及び栽培技術確立(H21〜23)
- 2.カーネーションの新品種育成(H21〜25)
- 3.長崎県オリジナル秋小ギク品種の育成(H23〜27)
- 4.「ブランド・ながさき」農産物育成事業(H21〜23)
- 5.DNAマーカー選抜と染色体操作による野生種由来ジャガイモ青枯病等複合抵抗性育種素材の育成(H21〜25)
終了した研究課題の成果の紹介へ
1.輪ギク新品種育成及び栽培技術確立(H21〜23)
(1) 背景
輪ギクは、周年安定生産が求められていますが、近年の燃油価格の高騰により低温期の暖房コストが経営を圧迫しており、低温開花性の品種が求められています。ただし、現在導入されている低温開花性品種は、腋芽の発生が多く、その除去作業に多くの労力を必要とします。
このため、低温開花性を有し、腋芽の発生が少ない半無側枝性系統の育成が望まれています。また、現在の低コスト加温管理よりもさらにコストを抑えた加温技術(変温管理等)の開発も求められています。
(2) 目的
本センターで選抜した「長崎2号」の低温開花性を保持した上で、半無側枝性系統を選抜します。また、生育ステージを4期間に分けて最適温度を解明し、より低コストとなる加温技術を確立します。
(3) 内容
「長崎2号」半無側枝性系統の選抜においては、本センター及び生産者圃場から腋芽の発生が少ない系統を選抜し、2年目に増殖して、腋芽の発生程度について再調査を行い、優良系統を選抜していきます。また、無側枝性の発現が期待出来る組織培養やイオンビーム照射も行います。
温度管理技術の確立は、低温期の栽培期間を110日とし、4期間に分けて、それぞれ加温温度を数パターン設定し、品質を落とさずにコスト削減可能な体系を組み立てます。その際、夜間の変温管理を有効に利用します。
(4) これまでの成果
低温開花性秋ギク「長崎2号」の半無側枝性系統の選抜については、1系統を除いてほとんどの供試系統において低温期には腋芽の消失が見られませんでした。その中で腋芽が発生しても除去する必要がない小芽の発生が多い系統「長崎8号」を選抜しました。「長崎8号」は、イオンビーム照射により得られた系統です。
また、「長崎2号」よりボリュームがある「長崎4号」を選抜し、現地試作用に各地に苗を配布しました。さらに、燃油コストの一層の削減に向けて30余りの温度体系についてプランター試験を行った結果、「神馬在来」に比べて40%の暖房コスト削減が可能と思われる体系を確認しました。平成23年度は、実際に圃場において試験を行い、切り花品質等に影響がないか調査を行い、技術確立を目指します。
2.カーネーションの新品種育成(H21〜25)
(1) 背景
現在長崎県の栽培品種は世界的な民間種苗会社で育成された品種で、コロンビア、中国でも栽培されており、日本へ輸出されています。 以前は船便で届く品質が悪く安い外国産に対して、長崎産の高品質カーネーションを出荷することで市場での棲み分けを行っていました。しかし、近年航空便が発達し、外国から新鮮な花が届き、また品質の良い中国産カーネーションも出現し始め、輸入品との差別化の必要性が出てきました。
(2) 目的
「長崎ブランド」確立のため、カーネーション新品種を育成します。
(3) 内容
当センターで育成したカーネーションの優良系統を親に用いて交配を行い、1次選抜〜3次選抜、現地適応性試験等を実施して、 新奇性の高い系統および既存品種より収穫本数や切り花品質等が優れる系統を育成します。
(4) これまでの成果
2004年の交配実生より選抜を行い、黄白に鮮紅の縁の美しい花色の「こんぺいとう」および浅橙黄(黄色とオレンジの中間)の花色の「ミルクセーキ」を育成しました。 また、2006年交配実生より選抜した、濃いピンクの花色の「長崎3884」について、現地適応性試験で有望系統と判断されたので、2010年6月に「だいすき」として品種登録出願をしました。
また、2008年交配系統より2系統を選抜し、現在現地適応性試験を行っています。さらに、2009年交配の系統では82の優良系統を2次選抜しており、2010年および2011年についても1次選抜、交配を継続して実施しています。
3.長崎県オリジナル秋小ギク品種の育成(H23〜27)
(1) 背景
燃油や資材等生産コストの上昇やデフレの進行により施設花きが厳しい状況にある中で、本県では、露地栽培による低コスト生産が可能な小ギクが注目されています。小ギクは、家庭用仏花として盆や彼岸を中心に年間を通じて堅調な需要があり、また、県内での花束加工施設の稼働開始により、地元でも新たな需要が生まれています。
(2) 目的
生産者、市場、関係機関等から栽培特性、品質に優れ、低コストで導入が可能な本県オリジナル小ギク品種の育成が求められていることから、小ギク育種の第一段階として、秋小ギク(10〜11月出荷)品種の選抜・育成に取り組みます。また、次の段階として、よりニーズが高い寒小ギク(12月出荷)等オリジナル品種のさらなる育成・充実を目指します。
(3) 内容
選抜した優良系統の交配により得られた種子由来の苗、及び優良系統の花弁培養により得られた培養植物体由来の苗を7月に本圃に定植し、秋の開花時に草姿や栽培特性等が優れた系統を選抜します(1次選抜)。
次に、得られた選抜系統を翌年作付けし、生産者や市場、関係機関等からの評価も受けながら系統を絞り込んでいきます(2次選抜)。さらに、翌年、生産者圃場での現地適応性試験及び市場性の調査を行います。最終的に、色の組み合わせのバランスが良い白・赤・黄の3品種を選抜して品種登録出願を行い、現地への普及を図ります。
(4) これまでの成果
22年度に予備試験を行い、自然交雑種子由来の個体が10〜11月に開花した中から、優良系統を選抜しました。この優良系統を材料として交配及び花弁培養を行った結果、交雑種子由来の苗と培養由来の苗が得られているので、これらを用いて一次選抜を行います。
4.「ブランド・ながさき」農産物育成事業(H21〜23)
(1) 背景
燃油価格の上昇により冬〜春出荷の施設花きが厳しい状況にある中、冬季において少加温栽培や無加温栽培で栽培可能な新たな品目・品種を探索することが求められています。
(2) 目的
本県において、近年生産量が増大している有望品目のトルコギキョウについて、春出荷作型の暖房費の低コスト化を図るため、少加温管理条件化で各メーカーの品種を栽培し、本管理方法に適合した品種を検討します。
また、比較的低温または無加温でも生育、開花が可能な品目を探索するため、可能な限り多くの品目を導入し、評価を行います。
(3) 内容
トルコギキョウでは、各メーカー推奨品種を供試して、日没後短時間昇温(9〜18時加温機8℃設定、18〜20時15℃、20〜6時9℃、6〜9時10℃)及び生育前半での昼間蒸し込み(40℃を超えて換気)を組み合わせた管理を行うことで、本管理方法に適合した品種を検討します。
低温開花性品目では、ジギタリス、フロミス、ユーカリ、モナルダ、カリオプテリス、ラベンダーの6品目を導入し、栽培試験を行い、最終的には、市場評価まで含めた評価を行います。
(4) これまでの成果
トルコギキョウでは、22年10月5日に24品種を定植し、上述の管理法を行った結果、「ボレロホワイト」、「雪みちる」、「エクレア」、「エンゲージイエロー」、「桜みちる」の5品種は3月中に8割以上が採花(4輪開花)でき、葉先焼け等の発生もほとんど無く品質は良好であったため、特に有望であると判断されました。ただし、「エクレア」は覆輪のピンク色がやや薄くなりました。
県基準技術において、10月上旬定植では、加温機13℃設定で3〜4月に採花(3〜4輪開花)となっていますが、選定した品種を用いて上述の温度管理を行うことで、暖房コストを削減しながら3月に出荷できることが明らかとなりました。
また、ドイツで購入したラベンダー種子を平成22年5月に播種し、開放ハウスで育成したところ、本県オリジナル品目の長崎ラベンダー「城南1号」に比べ、開花が10日〜2週間早い5月19日で、花色はやや濃く、草丈はやや低く、花穂は丈夫という特長を持つ優良個体を選抜しました。今後、本個体を維持するとともに増殖を行い、24年春の開花で特性を再確認します。
5.DNAマーカー選抜と染色体操作による野生種由来ジャガイモ青枯病等複合抵抗性育種素材の育成(H21〜25)
(1) 背景
ジャガイモ青枯病は、導管内部で細菌が増殖して茎が立ち枯れ症状を引き起こす土壌病害で、収穫量の減少やいもの腐敗を伴うため、 ばれいしょの生産に深刻な影響を与えています。消費者ニーズである「安全・安心な農産物」「環境負荷の低減」、生産者が求める 「安定生産」「減農薬栽培等による高付加価値化・ブランドの確立」に応えるため、青枯病に強い品種の利用は重要です。
(2) 目的
青枯病に強い野生種は、一般に栽培されているばれいしょ(栽培ばれいしょ)とは直接交配出来ません。野生種が持つ青枯病に強い 性質を栽培ばれいしょに導入するため、交配可能な青枯病等に強い育種素材を育成します。
(3) 内容
育種素材を育成するために、栽培ばれいしょの染色体を半分に減らしたばれいしょと、青枯病に強い野生種との細胞融合や交配を行った 後に染色体を倍加し、栽培ばれいしょと交配できる素材を育成する。
(4) これまでの成果
近縁ばれいしょとの交配を行い、栽培ばれいしょの半分の染色体を持つばれいしょを育成しました。
参考資料
1.新規導入花きの技術開発(H18〜20)
(1) 背景
ラベンダー「城南1号」は、大村城南高校において育成された暑さに強く観賞性の高い品種で、県花き振興協議会鉢物部会(生産者の組織)が譲り受けて品種登録を行い、鉢物・苗物として商品化を進めています(商品名:長崎ラベンダー)。また、この品種は6月と9〜10月の年2回開花する二季咲き性という特長も持っています。
(2) 目的
消費者ニーズが高い4〜5月や9月に鉢物や苗物として出荷するため、開花調節技術の開発を目指しました。
(3) 内容
ラベンダーは、冬の低温遭遇後、春に芽が伸長して開花に至る植物なので、低温遭遇後に開花を促進させる加温及び電照の方法について検討を行いました。
(4) これまでの成果
1月下旬から2月下旬に15℃加温と深夜4時間の電照を開始することで、自然条件より約1ヶ月早い4月下旬から出荷できるようになりました。 また、5月に開花した株を6月上旬に切り戻し、一回り大きな鉢に植え替えることで、9月にも出荷できる技術を確立しました。
平成23年の春、長崎ラベンダーの鉢物と苗物は、関東・関西・九州の市場を中心に約4万ポットが出荷されました。
2.バレイショの疫病抵抗性育種素材の育成(H16〜20)
(1) 背景
疫病は、ばれいしょ栽培における主要病害で、収量低下やいもの腐敗を防ぐために殺菌剤の散布が複数回行われています。 ばれいしょの減農薬栽培や環境保全型農業を推進する上で、疫病に強い品種の育成は不可欠です。
(2) 目的
疫病に強い品種を探索し、交配した集団から疫病に強い育種素材を育成するとともに、DNAマーカーを用いた効率的な選抜法を開発します。
(3) 内容
疫病菌の接種検定により育成した材料を用いて 抵抗性を判別できるDNAマーカーを開発します。また、疫病に強い品種・系統を交配親とする 雑種個体から、暖地向けの疫病に強い育種素材を選抜育成します。
(4) これまでの成果
これまでの成果:長崎県下で主に発生している疫病菌レースに強い、真性抵抗性遺伝子R2 を持つ個体を選抜できるDNAマーカー(特許出願済) を開発しました。育種素材として、「長生1号」「長生2号」を育成し、暖地向けの疫病に強い優良品種の育種に利用しています。
参考資料
「長崎県農林業バイオテクノロジー研究−成果と今後の課題−」(H18年度)
長崎県農林部農業経営化(長崎県農林業バイオテクノロジー推進連絡協議会)編
3.放射線と組織培養による突然変異を利用したキク・鉢物の優良系統育成
(1) 背景
輪ギクは、本県花きの最重要品目ですが、主力品種「神馬」が無登録品種で花芽分化に高温を必要とするため、中国等からの輸入急増や燃油価格等の高止まりにより厳しい経営環境が続いています。収益性改善のために省力・低コスト品種の育成が期待されています。また、洋ランや鉢物においては、新商品開発のため、生産者自身による育種を推進していますが、経営的な負担が大きいため県の機関が一定の役割を担う必要があります。
(2) 目的
輪ギクは、「神馬」並みの切り花品質を有する低温開花性で腋芽発生が少ない系統の育成を、鉢物では、ラベンダーのオリジナル品種「城南1号」の矮性変異系統の育成を目標としました。また、生産者が選抜したコチョウランを早期に普及するため、効率の良いクローン苗増殖技術の確立を目指しました。
(3) 内容
輪ギクでは、花弁培養やイオンビーム照射を行って突然変異を誘発しました。ラベンダーでは、無菌植物の腋芽にイオンビームや軟X線照射を行い、矮性変異個体を探しました。コチョウランでは、クローン増殖のし易さや変異の有無、培養期間短縮法を検討しました。
(4) これまでの成果
輪ギクでは、本県で育成した低温開花性の「長崎2号」のイオンビーム照射個体の中から「神馬」並みの切り花重量と花の大きさがある「長崎5号」を育成しました。また、「晃花の富士」の花弁培養によって腋芽の発生数が非常に少ない系統や日持ち性が向上した系統が得られました。ラベンダーは、開花する枝数が多く、矮性の個体がいくつか得られており、増殖した後に矮性が維持されるか確認中です。コチョウランは、試験に用いた3系統中2系統はクローン増殖による変異がなく、増殖に適していました。また、花茎の腋芽培養から1年で鉢上げできましたが、増殖率に課題が残りました。



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