■研究企画部門 − 研究企画室 ( 農業経営担当 )

◆農業経営および地域農業に関する調査研究◆

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●農業経営と地域農業動向に関する、現地調査とデータ分析を行っています。

●本県の品目別経営指標データ(収支や労働時間など)を利用した、営農計画づくり用の試算ツールに関する研究を行っています。

●技術部門が開発する新しい生産技術体系の経営的評価を行っています。


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現在取り組んでいる研究課題の紹介

1.企業的農業経営確立手法の開発(H23〜25年度)

(1) 背景

農家戸数、耕地面積とも年々減少し、農業経営の基盤は弱体化しており、さらに農外所得の減少が著しく、県平均の農家所得は17%減(対H10)と安定兼業も困難になっている傾向です。このような中、農村の活性化や農家の生活維持のためには、、家族経営から土地や労力を他から調達・活用して、経営の充実を目指す「企業的経営」へのステップアップを促進するなど、農業所得の向上を図る取り組みが求められています。

(2) 目的

家族経営から企業的経営への発展と経営の確立を支援するため、新たな経営指標、経営計画策定ツールを策定するとともに、大規模経営体での労力計画づくりを支援する労力試算システムを作成する。

(3) 内容

経営発展を促進するため、企業的経営への実態調査により雇用など経営改善手法の導入条件を解明します。新たな技術・品目の経営指標を作成し、農業者が利用しやすい経営試算ツールを開発し、経営計画策定の支援を行います。

また、諫早湾干拓の大規模経営体を対象に労力実態を行うとともに、作業計画の修正に即座に対応できる労力試算システムを作成し、経営者の円滑な労力管理を支援します。

2.規模拡大を目指した露地アスパラガス生産技術の確立(H22〜26年度)

− 経営的評価 −

(1) 背景

本県のアスパラガスの産出額は約24億円(全国第4位)ですが、近年栽培面積が伸び悩み、横ばい傾向で推移しています。 アスパラガスは、国産品の消費の伸びが期待でき、単価も比較的安定しているため、その生産拡大は、消費者と生産者の双方にとって有益です。 そこで、当センター野菜研究室では、生産拡大と水田利用率向上のため、アスパラガスの露地単年どり栽培体系の確立に取り組んでいます。

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(2) 目的

この栽培体系の導入を農業者の方などが検討するために必要な情報を、おもに経済性の面から調査し提供します。

(3) 内容

コスト分析と売上予測を行い、収益性に関するシミュレーションを行うとともに、 実際にこの栽培体系を導入するために必要な条件を提示します。 また、既存の雨よけハウス栽培を含め、どのような作物・作型との組み合わせが可能か、最適な規模はどれくらいかなど、 営農計画の参考になる情報を提供します。


 

終了した研究課題の成果の紹介

1.びわ産地復興と経営再建のための営農計画策定・評価手法の開発(H20〜22年度)

(1) 背景

長崎県は、びわの生産量で全国1位を誇ります。しかし、生産者の高齢化や、需要・価格の低迷と、台風などの気象災害によって 産地規模は縮小傾向にあり、現地では、さまざまな産地復興対策が講じられています。/p>

(2) 目的

産地ごとの中長期的な生産計画づくりを支援するため、シミュレーション手法とツールを開発・作成します。

(3) 内容

単位地区の全園地データを利用した、中長期的なびわ生産計画づくりに役立つシミュレーションツールを作成し提供しました。 また、老木の改植や新品種導入の適切なタイミングと実施規模について、個々の農家の意思決定を助ける営農計画試算ツールを作成し、これらをもとに、長崎市においてモデル地区を選定し、集落でのびわ生産等のシミュレーション分析を行いました。

◎成果情報(PDF形式):[H20]経営計画作成支援のための損益分岐点分析ツール

◎成果情報(PDF形式):[H20]びわ産地復興アンケート等からみるびわ産地の現状と課題

◎成果情報(PDF形式):[H22]びわ産地経営シミュレーションシステムの開発

◎成果情報(PDF形式):[H22]びわ産地・園地データによる長崎市のびわ産地(集落)の動向分析

2.営農計画を試算するツールを作成しました

(1) 背景

長崎県の主要品目を栽培・飼養するときの経営指標データ(収支や労働時間などのデータ)は、 5年ごとに「長崎県農林業基準技術」として県農林部が発行しています。 営農計画を立てるときは、品目(および品種や栽培方式)選びと、生産規模(栽培面積や飼養頭羽数など)の決定という意思決定が必要です。 当研究室では、「農林業基準技術」のデータを呼び出して営農計画の試算を行うプログラム(「営農類型試算プログラム」という名称で、 表計算ソフトウェア上で動作します)を作成し、MS-DOS(R)版からMicrosoft(R) Windows(R)版への改良など修正を加えながら提供してきました。 しかし近年では、集落営農や諫早湾干拓地をはじめとする大規模な農場が増えるなど、従来の試算方法だけでは意思決定が難しい事例が増加して来ました。

(2) 目的

そこで、これらのケースにも対応できるように「営農類型試算プログラム」の機能拡張を行いました。

(3) 内容・成果

品目と生産規模を決めたうえで試算を行う方法(試算計画法)では、農地面積が大きな農場で、品目の組み合わせや適切な規模を 見つけようとすると膨大な回数の試算を繰り返さなければならないので、より早く答えを出すことが出来る線形計画法の機能を追加しました。

また、集落営農でアスパラガスや果樹などの多年生品目の導入を検討される場合において、年次ごとに(段階的に)どれだけの面積ずつ 導入していけばよいのか迅速に計算する機能を追加しました(左下の図)。

どちらの機能も、独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業研究センター 農業経営研究チーム(ホームページにジャンプ[外部リンク])から提供されている線形計画法 プログラムを計算エンジンに利用させていただきました。

(4) 関連情報

◎成果情報(PDF形式):[H21]集落営農組織の農地利用や営農計画を支援するプログラムの開発

◎成果情報(PDF形式):[H12]営農類型試算プログラム2の開発

3.長崎県の農業に関するデータマップを作成しました

(1) 背景

長崎県内は、自然条件(地形、気候、土質など)、社会・経済的条件(産業構造、立地、歴史など)が多様です。 それぞれの地域で、その土地に適合した農業生産活動が営まれていますが、農業者の減少や高齢化は依然として進行しています。

(2) 目的

県内の農業・農村の状況を視覚化することは、農業関係者を含む地域のみなさんが情報や認識を共有化するのに非常に有効です。 そこで、データマップの作成に取り組みました。

(3) 内容・成果

データマップのデータは、おもに農林業センサス調査の結果を使用し、旧市町村マップと農業集落マップを作成しました。 旧市町村マップ(左上の図)は、1950年(昭和25年)時点の市町村にほぼ近いもので、県内が180に分割されています。 合併がすすんで広域化した市や町では、旧町・旧村ごとの特徴が把握できます。

農業集落マップ(左下の図)ではさらに細かく、県内が約3,000に分割されています。旧市町村のデータマップでは平均化されて、 その特徴が見えなくなってしまう農業集落の実態が見えてきます。 ただし、農家戸数が4戸以下の場合など、データが農林水産省から公表されていない集落があります。 なお、これら地図データは、(財)農林統計協会から発行されている「2005年農林業センサス農業集落地図データ(shapeファイル)」 を利用しています。

(4) 関連情報

◎新聞情報[研究所から(長崎新聞)] 地域農業の現状を視覚化できるデータマップ

4.有機JAS認定農家の事例調査を行いました

(1) 背景

有機農業の推進に関する法律にもとづく、県推進計画(有機農業の推進に関する施策についての計画)を策定するうえで、 県内で有機農業を先駆的に実践されている方々の実情と声は不可欠です。

(2) 目的

そこで、現地事例調査の第一弾として、JAS法にもとづく有機認定農家(農水省が参考値として公表している人数は当時66名)が もっとも多く所属している産直組織(構成農家55戸、うち有機認定農家24戸)の実態を調査させていただきました。 JAS法にもとづく有機認定品目は、タマネギ、バレイショ、カボチャ、ブロッコリー、ニンニク、インゲン、トマト、オクラ、ニガウリ、水稲、黒ゴマ、茶、ミカンなどです。 このうちタマネギとバレイショの面積が大きく、その大半は島原半島地域内で、いくつかの産直組織に属する農家によって生産されています。 調査対象の組織は、これらの組織のひとつで、主要な有機認定品目はタマネギとバレイショです。

(3) 内容・成果

調査組織では、有機タマネギの生産は、有機バレイショに比べ収量、品質とも安定しており、生産は拡大傾向にあるものの、 有機栽培に好適な圃場の確保が困難なことが生産拡大の制約要因となっています。 一方、有機バレイショは、主に病害による減収リスクが高いために栽培面積が減少傾向にあり、大半の栽培農家は経営内の有機生産割合を低く抑えています。 詳細は、成果情報をご覧ください。

今回の調査対象は、少量多品目型の経営というより、どちらかといえば少品目大量生産型の有機農家といえます。 有機栽培で、減収リスクが高まる品目(本事例ではバレイショ)では、販売先からの有機栽培品の生産要望に応えるために、1戸の農家は有機栽培と 減農薬・減化学肥料栽培とを同時に行い、それを複数の農家で行うことによって販売量をある程度確保しようと努力されています。 輪作も含めた有機栽培技術の進展に向けた関係者の取組が必要です。 一方で減収リスクが比較的低い品目(本事例ではタマネギ)では、有機栽培を拡大するうえで農地確保が問題になっていることが明らかになりました。 狭小な傾斜地圃場が多い本県においては、借地による有機栽培の拡大をスムーズに行うことができるような第三者による調整など何らかの支援が必要と思われます。

今後、減収リスクの高い品目で有機栽培を実践する方は、取引条件や保険加入なども栽培前に検討することになると思われますが、事例調査の農家データをもとに、 リスク軽減策の効果を計測する方法のひとつとしてモンテカルロ法を試みました(左下の図)。

(4) 関連情報

◎成果情報(PDF形式):[H19]島原半島地域におけるバレイショ、タマネギの有機栽培の実態

◎成果情報(PDF形式):[H19]バレイショ有機栽培の減収リスク軽減策の評価法

5.農業経営における利益を等高線グラフで示すツールを作成しました

(1) 背景

農業経営において、農業所得や利益(企業利潤)の見込みを立てるとき、費用はおおむね正確に予想できたとしても、 販売数量と販売単価の予想が立たない場合があります。 販売数量は、気象条件などで変わります。販売単価は、収穫時期が早まったり遅れたりすると変わりますし、他産地や消費の動向の影響を受け変動します。 また、販売形態や販売チャネル、農産物の品種や用途、栽培方式、農業者の価格交渉力などが多様化しているため、 同じ地域の同じ品目であっても、販売数量と販売単価の組合せは膨大です。特に販売単価と収穫量の変動域が大きい品目の場合に有効です。

(2) 目的

費用と販売数量と販売単価と農業所得(または利益)の関係を可視化するのには、等高線グラフが適しています。 そこで、等高線グラフの作成を半自動化するツールをMicrosoft(R) Excel(R)で作成しました。

(3) 内容・成果

経費の入力項目は、生産経費が4つ(物財費、労賃、地代、利子)、出荷・販売経費が3つ(選果・出荷費用の単価、運送料の単価、手数料率)です。 これらを入力した後、グラフの軸設定として、縦軸、横軸それぞれの最小値、最大値および目盛間隔を入力します。 農業所得と利益(企業利潤)のどちらも等高線で表すことが可能です。

基本的に農協や卸売市場への販売委託を行う場合を想定していますが、入力を工夫すれば自家(自社)販売にも対応できます。

なお、グラフのデザイン(特に等高線の間隔や線間領域色の設定など)に関する細かい設定は、本ツールではできませんので、グラフが自動作成された後にユーザーが手動で行って、 見易さを向上させる必要があります。

利用のご希望があれば当研究室までご連絡ください。

(4) 関連情報

◎成果情報(PDF形式):[H19]農業所得の等高線図作成ツール

6.簡易な圃場情報視覚化ツールを作成しました

(1) 背景

農作業の外注(受委託)や集落営農が広がると、少人数で多数の圃場の情報を集中管理する必要性が高まってきます。 そして、受託作業の実施計画や、合理的な作付け計画について合意形成をはかるには、圃場の情報を地図で視覚化することが、 活発な議論や情報共有の点で非常に有効です。しかし、一般の農作業受託組織や集落で、地理情報システム(GIS)を導入することは、 費用や専門知識の面でまだまだ敷居が高いことが多いのが現状です。

(2) 目的

そこで、市販のソフトウェアを利用して(マクロ機能を使い)、操作が容易でシンプルな圃場情報視覚化ツールを作成、提供することとしました。

(3) 内容・成果

マクロ機能を持ち、比較的入手しやすいソフトウェアとして、Microsoft(R) Office Access(R)とMicrosoft(R) Visio(R)を選定しました。 前者はデータベースソフトウェアで、圃場の情報をMicrosoft(R) Excel(R)(表計算ソフトウェア)で管理している場合でもそれを容易に取り込むことができます。 後者は、設計図面や配置図などビジュアルなドキュメントを作成するソフトウェアで、圃場に見立てた図形を圃場の数だけ図面上に配置して、個々の図形とデータ ベースの圃場データをひとつひとつ対応させると、GISのように1筆ごとの情報の視覚化が可能になります。

当研究室では、作業受託組織で作業の進捗を管理する場合や、集落内の状況を関係者で共有する場合など、複数のバリエーションを作成しました。

ユーザーは、データ入力、図形とデータとの対応、データベースとの同期が済めば、操作用ユーザーフォーム(リモコンのようなもの)のボタンを押して、 圃場のデータを地図上に表示させることができます。

航空写真や衛星写真、地図画像などを圃場図と重ね合わせることも可能です。 ただし、図形の座標データは、図面上の座標(左下隅を原点とする)しかありませんので、緯度経度などの情報を持つGPSデータの取り込みなどは困難です。 将来GISソフトウェアの導入を検討されている場合、本格的なシステムを構築する前段階のGIS学習用としての利用に有効です。

ユーザーの多様な使い方に対しては、比較的容易にカスタマイズができます。 たとえば、圃場ではなく1本の果樹に見立てた図形を図面上に複数配置して、樹体1本ごとの情報を視覚化することができます。 また、分散しているハウスや畜舎をひとつの図面上に描いて、施設ごと(あるいは畦やブロックごと)の情報を視覚化することも可能です。

長崎県内の農業関係者の方で利用希望があり、なおかつ圃場図(紙でも可)や圃場データをお持ちであれば、ご相談ください。

(4) 関連情報

ツールの画面イメージ(2種)をみるPDF

◎成果情報[H17]農家組織の意思決定などに利用できるパソコン用圃場情報視覚化ツール


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