がんしゅ病 感染防ぐ 台木の違いで収量も変化
2010年(平成22年)12月19日
初夏を告げる果物であるビワの栽培面積と生産量は、ともに長崎県が国内トップの座を占める。ビワの栽培を行う上で、特に注意すべき病害の一つとして、果実や樹体のあらゆる部分に発生し、枝や幹に発生する場合はがんしゅ(こぶ)状となる「がんしゅ病」がある。
通常、ビワの苗木にはビワ品種「茂木」の種から発生した苗(茂木実生苗)を台木(以下、通常台)とし目的とする品種を接ぎ木して用いるが、「茂木」は「がんしゅ病」に感染しやすい欠点がある。
これまで農林技術開発センター果樹研究部門では、ビワ品種の一つである「シャンパン」の実生苗を台木(以下、シャンパン台)とすることで、接ぎ木部分から「がんしゅ病」への感染を防ぐことを成果として公表している。しかし、「シャンパン」は「がんしゅ病」に対して優れた抵抗性を示すが、台木として利用した場合に果実品質への影響が懸念される。
今回、ビワ新品種「なつたより」についてシャンパン台を利用した場合の果実品質や樹体の特性について明らかにしたので報告する。
「なつたより」は、果樹研究部門で1990年、「長崎早生(わせ)」に「福原早生」を交配して育成し、昨年に登録したばかりの新品種で、平均果実重が60c以上と「茂木」(45c)に比べて大果で、果肉も柔らかく食味に優れる特徴を持つ。
試験はシャンパン台、通常台それぞれに「なつたより」を接ぎ木した1年生苗木を用い、圃場(ほじょう)に2b間隔で植え付けていった。
植え付け後4年目に調査した結果、心配されたシャンパン台の果実品質低下は見られず、通常台と同等であった。むしろ、収穫果実の2L以上の大果の割合においては通常台の77%に対しシャンパン台は85%と大果割合が高かった。さらに、シャンパン台の幼木時の枝数は通常台に比べ1.3倍、樹容積も1.5倍程度と多くなり、収量も2倍程度に増加した=図表参照=。
このように、「なつたより」の台木に「シャンパン」を使用することで、「がんしゅ病」の感染防止ができ、収穫果実の品質についても問題はなく、さらに初期の収量性が向上することが明らかとなった。
果樹研究部門では今後も肥培管理や栽培技術の開発を進め、よりおいしいビワの安定生産に貢献していきたい。

「なつたより」結実状況

「なつたより」幼木での台木の違いと果実品質、大果割合および収量(2009年)

台木の違いによる1樹あたり収量の比較(2009年)
(長崎県農林技術開発センター果樹研究部門ビワ・落葉果樹研究室 主任研究員 松浦正)



気象観測データ
農林資料館