水稲葉枯症 発生メカニズム解明
2010年(平成22年)4月18日
本県の大村東彼地区から佐世保市、松浦市に至る地域において、標高が高い(200〜450メートル程度)地帯に広がる水田では、昭和40年代から梅雨明け後強い風が吹いて数日経過すると、生育中の水稲の葉縁(葉の周囲)が枯れる症状が報告されてきた=写真=。
発症すると収穫量は1割以上減少する。発症初期は水田の中でほぼ円形に、しばらくすると別の場所にも症状が現れる傾向にあり、隣接する水田でも一方は発症するのにもう片方は発症しないなど、一帯的には発症しない。原因の特定には困難を極めたが、農林技術開発センター農産園芸研究部門作物研究室は、このたび、発生メカニズムを解明したので紹介する。
葉が枯れる要因として、カビや細菌・ウイルスなどによる病気、土壌中の有害物質による影響、大気中の有害物質、乾燥した高温の強風などの気象要因などが考えられた。
そこで、原因を解明するために、まず気象観測装置を現地に設置し、風・気温・日射量・湿度などを観測し、さらに、霧の自動採取装置やオゾンの観測装置を設置し調査した。調査結果を基に現地水田において病害防除・土壌改良資材投入などの技術対策を数年間実施し、次のような点が明らかとなった。
1.水稲の種類(品種)で症状の表れる程度が違う。2.水田の位置する場所による風当たりの強弱で発症程度が違う。3.養分が多く集まる部分で生育する水稲の葉は2割程度身長が長く、葉が長い場所から枯れ始める。4.梅雨が短いか空梅雨であると症状が現れない、または、発症程度が軽い。以上のことから次のように仮説を立てた。
@中山間水田は日射量が少なく水温が低い→A水稲の根が伸びにくい→B梅雨明け後日射量が多くなり地温が上昇する→C土壌中の有機物が分解され窒素が溶出する→D水稲の葉が伸び葉面積が拡大する→E土壌中に硫化水素ガスが発生し根からの養分吸収を阻害する→F中山間特有の乾いた高温の強風(フェーン)が吹き付ける→G水稲の葉縁からの水分蒸散が激しくなる→H日射量不足で育った成長不足の根は蒸散量に見合う水分を吸い上げきれない→I脱水症状→J葉縁が枯れる=図=
この仮説が正しいことを証明するために上記の条件下で実証試験を行った結果、平たん地の水田や、これまで発症がなかった中山間地水田で同様の症状を再現できた。また、この症状は、水稲、気象、土壌の複数の要因が重なったときにのみ発症し、いずれかの要因が欠けると発症しないことが分かった。
この症状を軽減させる対策として、田植えを可能な限り遅くして水稲地上部と根などの地下部の生育バランスを良好にし、過剰な養分の土壌集積を避けるために必要以上に堆肥(たいひ)などの有機物を投入しないことが大切である。今後、講習会や現地試験などを通じ、本対策の普及を図っていきたい。

水稲葉枯症発生部位

水稲葉枯症発生のメカニズム
(長崎県農林技術開発センター農産園芸研究部門 作物研究室長 渡邉 大治)



気象観測データ
農林資料館