新聞報道

環境に配慮した豚肉生産

2010年(平成22年)3月21日

近年、環境問題に対する消費者の意識は高く、今後養豚業が健全に維持・発展していくためには、周辺地域の環境面にも配慮した飼育管理が求められている。特に臭気問題は長年養豚農家を悩ませてきた問題の一つであり、早期解決が望まれていることから、飼料の栄養分を調整することで、ふん尿中の窒素とアンモニアの発生量を低減できることを明らかにした。

ふん尿から発生する臭気の主な原因物質の1つがアンモニアである。アンモニアは豚が飼料中のタンパク質などから取り入れた窒素のうち、豚の体内で利用できない過剰分が尿中に排せつされ、これがふん中の微生物に分解されることで発生する。このため、飼料に含まれるタンパク質を豚が必要とする最低限の量まで減らし、豚の体内での利用効率を上げれば、尿中に排せつされる窒素の量を低減でき、アンモニア揮散量の低減が期待できる。

ところが、トウモロコシなどさまざまな飼料原料のタンパク質を構成しているアミノ酸の割合には偏りがあり、単純に必要最低限のタンパク質含量で豚を飼育すると、リジンなど発育に必要なアミノ酸が不足する。

このために従来は原料中の少ないアミノ酸の量に合わせて飼料設計せざるを得ず、余分なアミノ酸が利用されずにふん尿中の窒素成分として排出されていたが、不足するアミノ酸だけを飼料添加により補うことで、過剰なタンパク質を減らし、窒素排せつ量を低減できないかと考えた。

また、近年の研究では豚の胃や小腸では消化・吸収されず、大腸内で微生物に利用される繊維質の飼料原料を用いても、尿への窒素排せつ量を低減できることが分かってきている。本県は馬鈴薯(しょ)の産地であるが、馬鈴薯のでんぷんもまた繊維飼料と同様の消化特性をもち、同等の効果が期待できると考えられる。

そこで本研究では、馬鈴薯でんぷんを20%配合するとともに、不足アミノ酸を補い、通常飼料よりタンパク質含量を4%抑えた飼料を用い、排せつされる窒素の量とふん尿から発生するアンモニア揮散量の変化を調査し、臭気の低減効果を検討した。

その結果、窒素の排せつ量はふん中通常区より多くなるものの、尿中では少なくなり、ふん尿を合わせた総窒素排せつ量は試験区が通常区の70%に低減された。特に、尿中窒素排せつ量が通常区の46%と大幅に低減されたことから、アンモニア揮散量も通常区の38%と大幅に低減された=表=

これは先に述べたように、アンモニアの発生が主に尿中の窒素に由来しているためである。一方、飼料からの窒素摂取量が少ないにもかかわらず、試験区は通常区に遜色(そんしょく)ない発育を示した。

以上により、馬鈴薯でんぷん給与による排せつ窒素量とアンモニア揮散量の低減効果が確認された。今後、廃棄処分されている規格外馬鈴薯などを飼料として利用し、臭気低減と資源循環に資する環境に配慮した豚肉生産技術の確立を目指したいと考えている。

                      豚舎内部

(長崎県農林技術開発センター畜産研究部門 中小家畜・環境研究室 主任研究員 本多昭幸)