新聞報道

硬質小麦品種『ミナミノカオリ』を安定栽培

2009年(平成21年)11月1日

一般に、粒の硬い小麦を硬質小麦といい、素麺のほかパン・中華めん用として利用される。一方、粒の軟らかいものを軟質小麦といい、うどんなどの日本めんや菓子に利用されている。ところが、これまで地元で栽培されていたのは、主に菓子用のタンパク質が低い軟質小麦であり、素麺への利用はできなかった。

このため、手延べ素麺に向くタンパク質の高い硬質小麦品種「ミナミノカオリ」を取り上げ普及に力を入れることとしたが、本品種は従来栽培されてきた軟質小麦の栽培法では収穫量が低く、素麺に適する小麦の実に含まれるタンパク質の割合である12%を確保できないという問題があった。

そこで、農林技術開発センターでは、「ミナミノカオリ」の増収技術とともに、小麦の実に含まれるタンパク質の量を制御する施肥の研究に取り組んだ。

@「ミナミノカオリ」の増収技術

小麦の収穫量に影響する要因としては、播種(はしゅ)時期・播種量・播種方法および施肥法がある。研究の結果、播種時期は11月上旬のような早まきは減収の危険があるため、11月下旬が適することを明らかにした。これは、播種時期を早くすると、冬季の低温による幼穂(茎の中にある穂の元となるもの)の凍死割合が高くなり穂の数が少なくなるためである。また、播種量は10eあたり7.5kg、うね幅は20〜30aが適当で、収穫量に最も影響する穂肥(2月下旬の施肥)は、窒素成分で10e当たり4kgが適することを明らかにした。

A「ミナミノカオリ」の子実タンパク質含有率制御技術

手延べ素麺に適する小麦の実(子実)に含まれるタンパク質は12%程度であり、そのためには、穂がでそろう時期の追肥が不可欠である。これまで窒素肥料を増やすと、一定割合で小麦の実に含まれるタンパク質の割合が増えることは分かっていたが、毎年天候などにより変わる小麦の生育状況に応じて、目標であるタンパク質含有量12%にするために、その年窒素を何キロ施肥すればよいかを予測する手法がなかった。

そこで、穂が出そろう時期の麦のさまざまな生育データと収穫時の小麦の実のタンパク質含有率の関係を解析したところ、穂が出そろう時期の上から2枚目の葉の長さ、および葉に含まれる葉緑素の量との関係が深く、これを使って、収穫時の小麦の実のタンパク質含有率を推定できることが明らかになった=グラフ= これにより、追肥料量の計算が可能となり、気象やほ場の違いがあっても、タンパク質含量12%の小麦を安定生産できるようになった。

「ミナミノカオリ」は、そうめん以外にも五島の手延べうどんの原料としても適しており、五島市でも栽培が開始されている。センターでは、今後も製品作りに必要な条件を満たす小麦栽培技術の確立と普及に引き続き取り組んでいきたい。

「上位第2葉の葉色値×葉の長さ」と「収穫時の子実タンパク質含量」の関係



「ミナミノカオリ」で作られた島原手延べ素麺

島原地区の手延べ素麺(そうめん)生産量は全国第2位で、地域産業の重要な地位を占めており、近年の地産地消や食の安全・安心といった消費者ニーズに対応すべく、地場産小麦を使用した手延べ素麺開発の要望が高まってきている。

(長崎県農林技術開発センター農産園芸研究部門作物研究室 主任研究員 土谷 大輔)