有明町認定農業者協議会、島原市認定農業者協議会「畑の土づくり」研修会開催
                                                                                               普及企画班 馬場係長

有明町認定農業者協議会、島原市認定農業者協議会では、それぞれ平成18年5月22日と5月25日に、長崎県総合農林試験場土壌肥料科の藤山科長を講師に「畑の土づくり」研修会を開催しました。
環境にやさしい農業を推進する上で、土づくりは欠かせないもので、有意義な研修会となりました。
 
   

<講演内容>

総合農林試験場土壌肥料科の藤山と言います、よろしくお願いします。

皆さんは、作物をご覧になるときは、上の方から植物の状況を見ながら生育診断されていると思いますが、私は土壌肥料を担当している関係で、土壌から作物を見てしまう癖が出来てしまっています、全体的に見ないといけないのですが、その辺のところはご了承願いたいと思います。

今、土壌肥料の流れといたしまして、かつては多収を目指す時代、その後、品質と収量の両方を目指す時代、21世紀になって今度は環境にやさしいとか、安全・安心とかが非常に求められています。
環境にやさしいとは、地球環境にやさしい、人の環境にやさしい、社会にやさしいということです。
社会の持続性のためには、やはり食料の継続性が必要で食料供給が保てなければいけないということを含めて「環境にやさしい」と言っていると私自身は解釈しております。
そのような流れの中で農薬の問題も色々ありますけど、肥料につきましては化学肥料を減らしていこうという取り組みがなされています。
総合農林試験場でも、研究課題の9割が肥料の種類や施用方法、堆肥の利用など化学肥料を減らす方法を様々な品目で研究しております。

化学肥料を減らすと簡単に言いますが、化学肥料だけ減らしたら十分な収量は得られないだろうと皆さんも考えておられると思います。
そこに「土づくり」というものがきちんと出来てないと、単に化学肥料を減らしただけでは、いい作物は作れないと考えられます。
そういう意味でやはり地力を高いレベルにもってきて、その基礎の上で化学肥料を減らしていくことが重要となります。
土づくりで地力を高める、では、地力とは何でしょうか。
非常に表現しづらい問題ですけれども、例えば、収量を縦の軸に、肥料の投入量を横軸に持ってきます。当然、ゼロに比べて肥料をやればやるだけ、収量というのは増えてきます。増えてくるけど、ある一定の収量になったら伸び悩み、それ以上やっても意味がないように落ち着きます。
しかし、土の性質を変えれば、施肥量に対して収量の伸びは大きくなり、肥料を増やせば更に上のレベルまでいけることになります。
その違いは何か、それが地力だということで、私たちは講義とかの中で学んできたわけです。

地力を高めていくこと、そこに土づくりがあるとなれば、土づくりとは何でしょうか。皆さんに聞いたら、よく返ってくるのが堆肥を入れる、といった答えが連想されます。
ただ土づくりというのは土の底力を高めていくことですので、もちろん堆肥で高めていくことは、これからお話ししますとおり大事なことですけれど、それ以外にも土の性質を変える方法はあります。

たとえば、石灰を入れる、それは土のpHを上げるためです。酸性では作物は育ちにくいし肥料をやってもなかなか収量は上がりません。石灰を入れるのもやはり土の力を引き出すための行為です。
また場所によっては、燐酸を含むようりん等を施用することもあります。
このようなことは、土の化学的な性質を変えて底力を高めるために行っているのです。

あと、排水をよくする。例えば、水田で野菜を作りますと排水というのは非常に大事になってきます。ですから水を逃がすための明渠を作るとか、うねを立てるとか、いろんな努力をされていると思います。
それも土の底力を高めてやることです。排水することで土の中に空気が十分入ってきて根が呼吸できますのでいい根が育ち、最終的にはいい作物がとれることになります。
このような土の底力を上げるための様々な行為を総称して土づくりといいます。
土を育て、根を育て、最終的には作物を育てるということです。

それでは、資料に基づいて話をさせていただきます。

最初に土壌診断を活用していますか?との問いかけを書いております。
土壌診断を実施すると処方箋としてpHが低いですよとか、ECが高いですよとか、コメントがついてきます。そこをよく見て肥培管理をすることが必要です。
しかし、最近は、昔と違って土の性質を変えやすい資材がかなり増えてきましたので、割と早く土の性質が変化してしまう恐れがあります。
その時の数字の高低はもちろん大事ですけれど、例えば、5年前、10年前と比較して今年の結果はどう変わってきているのかを知ることも重要です。そこに皆さんの肥培管理の特徴が現れてきます。
例えば、石灰をやりすぎてpHが上がりすぎていませんかと書いてあります。これは実際にある話です。低いpHを上げるのは簡単ですけど、下げるのは大変難しい。
ですから、土壌診断で定期的にチェックしておかないと取り返しのつかないことにもなりかねません。
pHが上がりすぎたら微量要素欠乏を起こします。ホウ素欠乏、マンガン欠乏、亜鉛欠乏、鉄欠乏などです。
微量要素はもともと土の中にありますが、pHが高いと吸収されなくて微量要素欠乏をおこしやすいのです。pHのチェックといった土壌診断が大事です。

次に、土壌にカリがたまり過ぎていませんか?
特に施設では、どこでもカリは多いようです。カリは雨で流れやすいのですが、ハウスでは流れていかないため、どうしてもたまってきます。ですから例えば、カリが少ない肥料がありますので、そのような肥料を選択していくことも大事になります。

逆に、三番目にありますが石灰の投入不足でpHが低い酸性土壌になってませんか?。
これは、葉物類ではあまりありませんが、ばれいしょ畑では酸性化が進んでいる現状があります。
春・秋二作するのであれば、一作あたり40kg程度は入れましょうと申し上げていますけれど、急にpHが上がるとそうか病菌が増えてきたりしますので、どうしても石灰を入れるのが怖い。
そうか病対策で一番大事なのは種いも処理です。種いもで病原菌を持ち込まないということが1番のポイントです。
総合農林試験場では、今年からそうか病を出さずにpHを上げていく方法、石灰を補給していく方法を研究しています。その結果も数年後には出ると思います。
以上のように土壌診断、定期的なチェックは大事なことで、これも土づくりです。

続きまして、堆肥の投入ですが、堆肥には土壌微生物の餌になり微生物を活性化する、土壌を膨軟にして排水性・通気性・保水性を向上させる、作物に安定的に栄養を供給するなどの効果があります。

土壌1gに1億匹の微生物がいます。種類もたくさんいます。土を維持して植物を育ててくれる微生物がいるわけです。
その微生物は何を食べて生きているのでしょうか?それが有機物です。
有機物というのは、炭素が2つ以上つながってその炭素を背骨としてできている物質です。
それが土の中の微生物には必要です。植物は空気中の二酸化炭素と根から吸い上げた水を基に光合成で有機物を合成します。植物が作った有機物を食べているのが人間です。それが農業です。

土の中の微生物も有機物を体内で作り出すことは出来ません。でどうするか。
草やぶは何百年何千年たっても草やぶのまま、森は森のままずっと生き続けていきますが、これは植物が作り出した炭素化合物が地面の中に入ってそれを微生物が食べて次の植物へ栄養を補給しているので生き続けられるのです。
微生物の餌が有機物です。草やぶや森のように植物がそのまま土の中に返ってくれればそれが餌になりますが、農業はそれを持ち出してしまいます。
ですから、土の中の微生物を育てるためには、何かで有機物を土に返してやらないといけません。
農業で収穫した炭水化物、有機物は、堆肥などで土の中に返していかないと、微生物が育たず土の力は続きません。
様々な微生物資材がありますが、1億匹の微生物がいる中に特定の微生物を入れても土の力はそう大きく変わらないと思われます。
土の力を変えるためには、微生物の食生活を良くすることが必要で、微生物の餌である有機物によって土は変わってきます。
ですから微生物そのものを入れるよりも餌を入れる方が効果的と考えています。
微生物が減ったりバランスが崩れると、植物へ栄養が行き届かなくなったり、病気への抵抗性が低下することがあります。
堆肥を投入することで、土壌微生物の数と種類が増え、植物が健康に育つのです。
堆肥を何のために投入するかというと、もちろん植物にも一部は栄養になりますが、微生物の餌になっているということを考えていただきたいと思います。


次に、土と土との接着剤ということを書いております。

土の中には堆肥を噛み砕く専門の微生物がいて腐食というものを作り出します。
その腐食というのが接着剤となって土の粒子をくっつけ大きな粒ができます。それを団粒構造といいます。堆肥を入れることでそういう現象が現れてきます。
団粒構造には小さい隙間があり、毛管現象で水を保持することが出来ます。何日も日照りが続いても乾かない、しかしその水は植物にはうまく利用することができる、という非常に都合のいい水です。要するに土の水もちがいいという現象が出てきます。
団粒は粒が大きいので粒同士の間には大きな隙間ができ、雨が降った時、余分な水は下へ流れ、水が流れた後に空気が入り根も呼吸できます。
速やかに排水し新しい空気を入れる排水性と通気性の高い、水もちがよくて排水もよい土を作ることが可能となります。
元々、火山灰土壌は土の性質として腐食をくっつけやすい性質があり、水もちもよく排水もいい土が自然と出来上がっています。
赤土では、堆肥を入れて水もちや排水性をよくしていくことが必要です。
排水がよくなれば土の流亡も防いでくれます。
赤土は粘土粒子が小さいですので、雨に叩かれてそこで濁って、表面を流れていきますが、黒ボクの場合は、粒が大きいので下へ浸透します。
隙間が多いので土は柔らかいです、軽くなって耕すのも楽になります。まとめまして、堆肥を投入すると土が軽くなり、干ばつや長雨の被害を受けにくくなります。


最後に、堆肥が生み出す栄養素ということを書いています。

堆肥には窒素、りん酸、カリなどの肥料的成分を含んでおります。
成分の濃度やその効き方というのは、堆肥の種類によって異なってきます。
まず牛糞堆肥ですが、牛は草を食べますので窒素成分が他の畜種に比べて少なく、現物あたり1パーセント程度です。たくさんやっても窒素のやりすぎという心配は少ないです。
基準としては10アール当たり2〜4トン程度です。例えば、2トンで窒素成分20キロです。それのうち、すぐに溶け出してこないため3割程度が利用されると考えられ6キロ程度の窒素が入っていると考えてよいと思います。
牛は草を食べますので、牛糞堆肥には繊維が多く含まれており有機物が多く、腐食が増えて土づくりにつながる土壌改良効果が高いということです。

豚糞は、窒素成分2パーセント程度ですので、基準としては10アール当たり1トン程度です。
ただ、堆肥を作る場合にもみがらやわらなどを添加して、炭素の割合を増やすと、もう少し多く施用することも可能です。
豚糞の場合は土壌改良効果としては劣っています。
逆に肥料として利用する方法もあります。肥料成分が多いので化学肥料を減らすことが出来るという使い方もできます。

鶏糞は窒素成分が3パーセント程度と多めです。鶏糞は、肥料の代わりに使えます。
乾燥鶏糞で、基準としては10アール当たり500キロが限度です。
鶏糞も様々な使用方法は考えられます。他の素材を混ぜて炭素の割合を増やすと、土壌改良資材としての使用も可能と思います。それか逆に割り切って、肥料として使うことも考えられます。
三重県などでは、鶏糞を高熱処理してペレット粒にし肥料として販売している所もあります。ですから逆に肥料として使っていくという考え方もあります。
ただ、気をつけなければいけないのは、特に採卵鶏では、貝殻などを砕いた物、石灰を食べさせます。石灰分が多いということで、毎年やっていったらpHが上がってくることも考えられます。先ほど、石灰をやりすぎてpHが上がっていませんかということを申し上げましたが、それは石灰のやりすぎだけではなくって、鶏糞を毎年やってきて、pHが上がってしまったという事例もあります。
やはり、定期的に土壌診断をしていれば未然に防げます。そういったところは注意が必要だと思います。

牛糞、豚糞、鶏糞の長所、短所を申し上げましたが、長所をうまく利用する技術を実践していくことが重要です。牛糞堆肥は土づくりとして利用する、鶏糞や豚糞は肥料代わりに使うといった考え方が今後は必要になってくると考えます。


あと、1番最後に書いてありますけど、堆肥の難しいところは、温度が上がってこないと肥料成分が溶け出してこない。それは微生物が寒いときはあまり働かないからです。
寒い時期、冬作では堆肥の肥料的効果はなかなか出ないといった現象があります。
そこのところが、化学肥料に及ばないところです。化学肥料は効かせたい時に効かせることが出来るといった強みがあります。
ですから、そのへんのところもうまく活用しながらやっていかないといけないと思います。今、私達の研究の中で苦労しているところは、寒い時期に堆肥の肥料成分をいかに効果的に効かせて、化学肥料を減らしていくかということです。いろいろ試験をやっております。たとえば春白菜とか、寒い時期からスタートする作物は、有機物に頼るというのは、非常に難しいこともあります。今後とも研究は続けていきます。

あと、ロータリー耕ばかりを続けていませんか?
ロータリー耕ばかり続けていたら、その下の所は硬い層、耕盤になってしまいます。
耕盤ができると排水性の問題がでてきますので、深耕が必要です。
深耕用には、深耕ロータリーやサブソイラーなど様々な機械があります。
一年中使う機械ではないので、個人で購入するより共同で購入して、5年に一回は深耕し耕盤を破砕して、根が深くまで入るようにする。そうすることで、根も生長し作物も安定することになります。

あと、窒素肥料をやりすぎていませんか?
昔に比べたら今は肥料をかなり減らしていると思います。様々な作物で減らしているということの前提には、土づくりをしっかりとやっている結果、肥料を減らすことができていると思います。
今一度、施用した肥料のうち植物が吸わなかった分、余った窒素分はどうなるのかは考えなければなりません。
大部分は硝酸という形で地下へ流れていきますので、出来るだけ、窒素分が余らないような肥料のやり方が必要です。
一気に溶け出しても作物は急には吸えません。被覆肥料や緩効性肥料などをブレンドした肥料があります。少しずつ作物が必要なだけ効かしていくような肥料を選択することも重要です。
ただ、ちょっと問題なのが、肥料の効き方を調節できる肥効調節型肥料が特別栽培農産物や有機栽培の認証制度の中では、化学肥料にカウントされてしまうことです。
環境にやさしい肥料だからエコ肥料とかいい名前をつけてくれと私は思いますが、消費者の方はそれを単に化学肥料としてとらえてしまう。
消費者には有機だからいいという誤解もあります。
そういうことも含めて、様々な肥料をうまく利用することが必要です。
次に施用の仕方で量を減らす方法です。
全面全量施肥は、作業的には非常に楽ですが、根のないところにも肥料を散布してしまうわけで、その分はどうしても無駄になってしまいます。
ですから、根のあるところに肥料を集中的にやる、局所施肥、条施肥などで、肥料を減らしていく方法も考えられます。
植穴施肥とか、それはとても手がかかりますけど、ただそれを簡単にする方法も、開発していかなければいけないと考えております。
今、私たちが研究しているのは、どのようにして肥料を減らすか、堆肥をうまく利用するにはどうすればいいか、そういったものがほとんどです。

最後に排水対策です。排水が悪いときは何をするか、すぐ暗渠を入れてくれと言われますが、まず1番大事なのは水をその畑の中に入れないこと。
排水の悪い所では、降る雨はしかたがないので、その雨をいかに早く畑の外に出してしまうかです。
暗渠は土の中を通ってそれから排出されるわけですから、それよりも雨が溜まるのを未然にくい止めることが重要です。
まず、周囲に溝をめぐらして明渠を作る、そして、畑の中は畦を立てて、それをきちんと明渠につないでいく。排水能力としては、暗渠よりも明渠の方が非常に優れております。そういった意味で、まず、明渠といった考え方が必要です。

土づくりとはなにか、様々な作業は何のためにやっているか、ということを理解していただいて、今後の参考にしていただければと思い、お話をさせていただきました。
聞き足りないお話しで申し訳ございませんが、以上で私の話を終わらせていただきます。ありがとうございました。

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