第3回:想うということ

 いよいよ、茶事放談(農家対談)の始まりです。さて、記念すべき第1号の対談相手は、世知原町の前田國夫(まえだくにお)氏です。ここで、前田國夫氏について紹介します。

2-1  世知原町 前田國夫氏

 前田國夫氏は、昭和28年に17歳で世知原町の標高約450mにある黒石地区に開拓入植しました。当時の黒石地区は、道路事情が悪く、國夫氏は山道を徒歩で通い、過酷な自然条件に立ち向かいながら茶園を造成しました。また、冬の寒さは特に厳しく、収穫皆無となる被害を受けながらも、希望を捨てることなく、他の農家を励ましながら、茶産地の形成に力を尽くしてきました。そうした努力が実を結び、全国茶品評会、九州茶品評会、長崎県茶品評会において農林水産大臣賞を受賞し、高い評価を得ることになりました。そして、平成9年には農林水産祭において天皇杯を受賞するという功績もなしとげ、世知原町を代表する茶業農家としてその名を全国に轟かせることになりました。
 現在は、農業経営を後継者である秀樹氏に譲り、茶業振興のご意見番として活躍しています。とはいえ、ご夫婦ともに「茶園に足を運ぶことが日課」という習慣は今なお続いており、生産現場の第一線で秀樹氏と汗を流す毎日を送っています。

 そうした忙しい毎日を過ごされている前田國夫氏にお時間をいただき、お話を聞いてきました。今回のお題は「一番茶の生産、収穫に想うこと」です。

 −國夫さんには、是非、一番茶の生産にかける想いをお尋ねしたいと思います。
國「私は、現在、第一線を退いている立場なので、私の意見でよろしいのかな?という思いもあります。しかし、私の経験してきたことでよろしければ、お話します。」
−ありがとうございます。早速ですが、今年の一番茶の摘採も無事に終わりました。毎年のこととは思いますが、一番茶の摘採に臨むことからお聞きしたいのですが。

   國「お茶農家として生産の喜びを味わう幸せがあります。そのために、365日茶園に来て、茶園と対話することが必要と思います。よく、「茶は冬場が農閑期なのに何をしているのか?」と尋ねられることがあります。私は「茶園に逃げられんように見に来とるとよ。」と答えます(笑)。また、「今年の一番茶は良くなかった。」という人もいます。私は、(一番茶を)自分が育てた考えるのではなく、自然の恵みと考えています。お茶の樹は、言葉こそ発しませんが、生き物です。私たち人間は、その生命活動の一部を横取りして生活をしています。ですから、私は、茶の樹が快適に生命活動を育むことが出来るよう、茶の樹と対話し、「今何が必要なのか」を知ろうと考えて毎日茶園に足を運ぶわけです。また、茶の樹があってこそ私たち家族が生活できるので、茶の樹に感謝するよう家族にも話しています。一番茶の摘採とは、茶樹が与える「労働報酬」と思います。」
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